1. デジタル化とテクノロジー導入の加速
- 電子政府とコンプライアンス:
企業設立、納税、通関手続き(国家単一窓口経由)、各種ライセンス取得などがオンライン化。
電子署名も一般的に受け入れられており、官僚的手続きが大幅に簡素化されています。 - デジタル決済の主流化:
現金使用は急減。スマホ決済(MoMo、ZaloPay、VNPay)、QRコード、非接触型カードの利用が急速に普及。
スマホ普及率の高さと政府の後押しが背景です。 - クラウド&SaaSの普及:
大企業だけでなく中小企業も、クラウド(Viettel Cloud、AWS、Azure)やSaaS(ERP、CRM、人事、会計など)を導入し、生産性と柔軟性が向上。 - ECの成熟化:
Shopee、Lazada、Tiki、TikTok Shopなどのプラットフォームが成長。
ZaloやFacebook経由のソーシャルコマースも非常に活発。オンラインとオフラインの統合(OMO)も当たり前に。物流とラストマイル配送も大幅改善。
2. 製造業と外国直接投資(FDI)の進化
- 「中国+1」を超えて:
サプライチェーン多様化の恩恵は継続しつつ、ベトナムは単なる組立拠点から、半導体・電子部品などの高付加価値製造や研究開発へと進化中。 - ハイテク&グリーン投資:
Samsung、LG、Foxconnによるエレクトロニクス投資、IntelやAmkorによる半導体投資が拡大。
再エネ部品やAI・デジタルサービスにも注目が集まっています。 - サステナビリティの義務化:
ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応はもはや選択肢ではなく必須。屋上ソーラー、排水処理、省エネ投資が進んでいます。
EUの炭素国境調整措置(CBAM)への対応や国内規制の強化も背景。 - 人材育成への注力:
技術系人材不足が深刻。職業訓練校や大学との連携を通じ、技能者や自動化対応人材の育成が進められています。
3. スタートアップとイノベーションの活況
- フィンテック&プロップテックが主役:
デジタル融資、決済、保険テック、不動産テック分野に多くのベンチャー投資が集中。 - AIと第4次産業革命に注力:
物流最適化、パーソナライズ広告、設備の予知保全などAI活用が加速。
自動化ソリューションも拡大中。 - 政府の支援も活発:
国家イノベーションセンター(NIC)などの政策的支援により、ディープテック系スタートアップやイノベーションハブが育成されています。
4. サステナビリティと脱炭素が経営の中心に
- 再生可能エネルギーの導入:
PPA(電力購入契約)や屋上ソーラーで電力コスト削減と脱炭素を実現。風力・太陽光発電所への投資も継続。 - 循環型経済への移行:
ごみ削減、リサイクル、持続可能な原材料調達が進み、消費者意識の高まりや法規制(EPR=拡大生産者責任)も後押し。 - ESG報告の義務化:
輸出志向型企業や大企業では、IFRS S1/S2や国内指針に基づく正式なESG報告が普及しています。
5. 小売業と消費市場の近代化
- オムニチャネル戦略が常識に:
実店舗、EC、SNS、アプリがシームレスに統合。
ライブ配信ショッピングも人気。 - 近代的な流通の拡大:
都市部では伝統的市場から、スーパー・コンビニ・ショッピングモールへの移行が進行中。
清潔さやブランド力が鍵。 - データドリブン・マーケティング:
ビッグデータやAIを使った個別マーケティング、ポイント戦略、需要予測が一般化。
Z世代の好み理解も重要な課題。
6. 労働市場の変化
- 人材獲得競争が激化:
IT、エンジニア、マネジメント、デジタル分野のプロフェッショナル需要が高まり、給与や福利厚生も上昇傾向。 - 柔軟な働き方:
知識労働ではリモート・ハイブリッドワークが一般化。製造現場は基本的に現場勤務。
従業員のウェルビーイング重視が進んでいます。 - 賃金と期待値の上昇:
最低賃金の引き上げに加え、Z世代労働者が「やりがい・成長・企業理念の共感」を求めるようになっています。
7. 政府政策と規制の方向性
- インフラ投資の継続:
南北高速道路(東ルート)、ロンタイン国際空港、港湾整備などが進行し、物流のボトルネック解消を目指しています。 - 行政手続きの簡素化:
「非公式コスト(袖の下)」の削減、事務手続きの合理化も進められているが、地方ごとのばらつきには注意。 - ハイテク・グリーン分野への政策誘導:
半導体、AI、再エネ、持続可能な製造業などへの投資に対し、明確な優遇策が設けられています。 - サイバーセキュリティとデータローカライゼーション:
サイバーセキュリティ法の運用が強化され、金融・通信分野では国内サーバー義務などの規制が厳しくなっています。
🔻 2025年も残る主な課題
- インフラの遅れ:
電力供給の不安定さ(特に工業団地)、港湾能力、道路・鉄道連結に課題あり。 - 規制の複雑さと解釈の不一致:
特に地方レベルでの規制運用の違いや、突発的な政策変更への対応が難しいケースも。 - スキルのミスマッチ:
教育システムが急成長する産業に追いついておらず、高度技術やソフトスキルの不足が課題。 - 工業用地の確保と高騰:
ハノイやホーチミン近郊では、工業団地の土地確保が困難かつ高額になりつつあります。 - 再エネ転換のコスト:
脱炭素には多額の初期投資が必要で、中小企業の負担も大きい。
🔮 全体の見通し(まとめ)
ベトナムのビジネス環境は、
急速なデジタル化、ハイバリュー産業への転換、サステナビリティ重視、ダイナミックな消費市場
という4本柱で発展中です。
インフラ、法規制、人材といった課題はあるものの、
今後も「東南アジアでもっとも魅力的な投資先のひとつ」であり続けるでしょう。
成功するためには、
- テクノロジーの導入
- ESGへの本気度
- 現地との強いパートナーシップ
- 市場や人材の変化に対する柔軟な理解
がカギとなります。